講師コラム
設備に戸惑う部下には、研修でスタンダードを思う存分操作させよう(技術技能研修部 澁谷光基)2025/06/26
入社半年後に、阪神・淡路大震災が発生し、通常は入れない275,000V変電所を
臨時点検することになりましたが、私の目に入ったのは、刑務所の牢屋のような
多数の部屋と鉄格子だけでした。
機器の名称すら分からず、貴重な機会なのに、有用な経験とはなりませんでした。
その後、この変電所に関連して与えられたミッションの一つが、不要な停電を
起こさないためのブレーカーの制御装置の調整でした。間違えると製鉄所が
全部停電しかねず、周囲を説得させられる改善の方案が書けず苦労しました。
変電所に限らず、ほとんどの設備は普段製品を造ったりしているので、
試行錯誤は許されません。経験の積み方の難しさを実感しました。
ここで上司や先輩が「挑戦しなさい」と言うだけだと、やった振りをしたり、
表面だけ取り繕うことがしばしば起こります。こうなると重症です。
私の苦い経験の原因は、スタンダードな高圧(交流6,600V・3,300V)の設備を
学んでいなかったことにありました。
275,000Vは特別高圧と呼び、製鉄所の変電所のように大量の電力を賄うためには
必要ですが、工場や設備単位では高圧電気が圧倒的に多数です。
また、街中の電柱の上に見えるのも6,600Vの高圧電線です。
わが国では6,600Vで受電している物件がコンビニなども含め100万件以上あるため、
「高圧受電設備規程」で変圧器やブレーカーの選定や扱い方が標準化されています。
特別高圧と高圧は共通していることも多く、この取扱者に法令で義務付けられているのが
「高圧・特別高圧電気取扱い特別教育」です。
これを理解していれば、275,000V変電所の点検の時に、好機を逸することに
ならずに済んだのです。
この特別教育は当社でも実施していますが、当社の特徴は学科と実技の日程を
切り離していないことです。学科が実技を補強するように織り込んで配置し、
・近づくだけで感電
・スイッチを切る順序の間違い → アーク放電発生 → 感電死亡
といった急所を実習設備で体得できます。操作を失敗しても問題ないどころか、
むしろ理解が深まります。
アーク放電の危険も体験装置で一目瞭然です。
若手社員が配属されて来た時、職場や製品にカスタマイズされた設備を知る
ことは必須です。同時に、技術技能にはスタンダードがあり、このセオリーを
理解すれば、実際の設備の理解も速くなります。
弊社加古川技術研修センターの強みは、長年、実習を中心にした研修を多数
提供してきたことです。
一足飛びに「すごい設備」に取り組ませる前に、スタンダードな設備を研修で
思い切り操作する機会を授けてみて下さい。