● 時代の流れに乗った産学協同

 神戸大学で、今後しばらく正解のあるクイズをつくろうとすると、一つの論文を読んで、その理論に見合ったクイズを、運がよかったら三個四個できる。だけど一つの論文を読んでも、一個もできないケースと、論文のメッセージがワンメッセージだったら一個しか書けないことになる。
 今のところ最終的には、40個の設問をつくるのに120個ぐらい問題をつくって、項目反応理論という方法をつかって、難易度の違うものを10問ずつ選ぶ予定である。パイロット調査をさせていただく会社で、120問だと回答に時間がかかりすぎるようだったら、最初から、もう少し問題数を絞り込んで実施することになるだろう。できあがったら、ジェネリックなモデル、つまり、各社ごとのテイラーメイドにするための母体となるモデルは、誰でもがフリーで使えるように、パブリックドメインにあるウェブサイト(たとえば、神戸大学の経営人材研究所のサイト――まだあまりアクティブでなくて恐縮ながら、KIMPSとGoogleに入れてお訪ねください)にアップすることを、高橋さんは構想している。正解が出るのもおもしろいので、我が社にあったものがテイラーメイドでほしいというお話しがいただければ、この四次元をもとに、具体の会社ABC社さん向けのを作ってみたいという希望もある。また、クイズは本人が回答するので、360度フィードバックは意味をなさないが、特定の会社で尊重されるリーダーシップ行動に注目した、テイラーメイドのリーダーシップ尺度や、将来的には、高橋さんを中心に360度フィードバックできるようなものを開発できたらと希望をふくらませている。経営人材研究所のデータも集まるし、先方さんにも喜んでもらえる。
 そうなるとこっちの方で将来の研究の開発の原資になるようなものができる。開発を一生懸命にやって、大学院生の奨学金とか、そのあとの研究資金に還元できるようなお礼が払えるようになったら、理科系の世界の発明と一緒なる。そうなったら、わたしはより年長の教員として、発明家高橋さんのサポーターになっていきたいと思っている。発明そのものに価値があると思っている。発明発見にもそれなりの資金がいるというけど、今時代の清く正しい流れに乗った産学共同になるのではないだろうか。 市川先生は、勉学意欲のモデルづくりを高校生を念頭におこなったけれど、高橋さんの夢は広がり、小学校のときからのリーダーシップが大事だということで、小学生が読めるようなリーダーシップ絵本があればいいとか、いつもいっしょにいるときにはたくさん夢を語ってくれる。
 日本の産業・組織心理学では、肝心なことが研究されていない。たとえば、採用時の面接の研究や、評価のような大事なテーマでも研究が少なすぎると言われてきた。この高橋潔さんが今仕上げかけている書籍は、評価についての大著なので、仕上がって世に出たら、またわたしなりには、その説を皆さんにご紹介するか、このウェブに高橋さんにも登壇してもらうようにしたいと思っている。よろしく。