● 地域文化の問題点
--第三の視点:グローバルかローカルか
第三は地域文化の問題である。グローバルからローカル、ローカルからグローバルへの波がつぎつぎに現れている。地域紛争も濃くなっている。通貨の問題も、アメリカが後退しても、アメリカの力の代わりをするものが現れない。中国の元とか韓国のウォンがドルに変われば、東アジア、東南アジアの通貨問題は解決するのか。あるいは円だったら解決するのか。これはほんとうに難しい問題になる。
ということは、アメリカの極が無極化されるということは、極がほんとうになくなったのではなく、多極化されて地域化されてしまったということだ。
宗教とか文化にかかわる「文明の衝突」の時代は過ぎ去り、終わったといわれる。しかしほんとうは、この文化こそが、経済問題、安全保障問題を難しくしているのである。文化が共同体をつくる力がある、と過大評価するほど甘くはないけれども、文化のない共同体が経済の枠組みを構築できるのか? それもできない。
●「スマートパワー」の出現??肯定する力
ここで文化と「ソフトパワー」と「ハードパワー」が一つになる「スマートパワー」というフュージョン・スタイルを出現させなければならない。アメリカもこれを目指すべきだ。これからの時代では、極端な時代は自滅だ。資源と人間の対立、地域と地域の対立、一国支配はだめだ。つまり、否定的な視点から、ローカルはだめだ、グローバルはだめだという考えを変え、肯定的に、ローカルでないとだめだ、グローバルでなければだめだ、というスタイルをとる必要がある。
それらをオバマ大統領も演説にうまく取り入れている。
-- この国は、キリスト教徒とイスラム教徒、ユダヤ教徒とヒンドゥ教徒、それに無信仰の人たちの国である。互いに妨害してなにができるのか。
オバマはこのように正面から肯定の力の「イエス」を表に出している。
今までは「ノー」という否定から爆発して革命を起こしたりした。今回の金融の世界的危機も、拒否とかネガティブな力では回復できない。
仕事の問題、環境の問題など、否定的な次元から発想しても成功しない。かつては群小国家の一人の独裁者の革命には「ノー」が必要だったが、今はそうした時期ではない。否定的な力を肯定的な力としてどう利用するのか、これが今後のいちばん大きな問題だろう。