● 個人主義と自由
今年も日本との間を七回往復した。滞在した日数は一か月くらいになるだろう。こんな生活が1980年代から続いている。日本に来るたびに、友人たちに投げかけている質問がある。
「日本はどうしてこんなに変わってしまったのか。なぜ伝統的な日本の価値観を捨て、今のようになってしまったのか」
友人たちの答は判を押したように、
「若者たちがアメリカの個人主義と自由の価値観をやたらに取り入れているからだ」である。
だがよくよく聞いてみると、アメリカの個人主義と自由とはいったい何なのか、その内実が私の考えているものとは違うらしい。
たしかに個人主義と自由の意味も、時代とともに変化している。たとえば、1930年代の大恐慌などの経済状況、国家の危機などと微妙に関係があった。とはいえ、この二つの価値観は今日でも厳然としてアメリカ文化に存在するし、少なくとも今日のアメリカをつくり上げてきた基石であることは間違いない。
だが最近、アメリカの若者たちは、これらの価値観の本来の意味を忘れている。怠惰、思いやりのなさ、自己中心的、尊大さの同意語ないし、自らの言い訳に使っているのだ。日本の若者が取り入れているのも、どうもこちらの意味のようだ。