● アメリカの伝統の復権


 たしかに、昨今のアメリカの個人主義と自由は、怠惰、無作法、無配慮、無責任の口実の御旗になってしまっている。
 幸いなことに、この状況は少しずつ好転しはじめている。家族や教会などの精神生活をはじめ、コミュニティで引き継いできた価値観と善意を取り戻そうと、多くの人々がすでに歩きはじめているからだ。合衆国の前途には長い道のりが横たわっているが、ゴールに向かって第一コーナーを回ったところだ、と実感している人々も少なくない。

● 見直してほしい日本文化の根


 さて、日本はどうだろうか? 日本の若者が大義名分としているのは、本当のアメリカの個人主義と自由ではない。ゆがめられた個人主義であり自由である。
 私は、洋服を捨て着物と浴衣に着替えよ、というアナクロニズムを提案しているわけでは毛頭ない。しかし、永年にわたって、祖父の国・日本を観察しているアメリカ人研究者として、ここで祖父たちが大事にしていた伝統的な価値観を見直すことをせつに勧めたい。あの勤勉、自己犠牲、精勤、謙虚、謙譲、感謝、尊敬、忠誠、信頼、名誉、勇気、品位、誠実など、これらは何千年もの間受け継がれてきた日本人の特質であった。日本人のアイデンティティとは、なにもワーカホリックのロボットとか封建時代の武士のイメージではない。ユニークな人間性にあるはずである。21世紀に日本国民が根無し草の国民になることを、私は恐れる。

(原文英語・翻訳:三木敦雄)