講師コラム
「経営的視点」で人事部について少し思考する(講師 濱尾 功二郎)2024/02/07
~KBP講師が人事担当者様・ビジネスパーソンの方々へ役立つヒントをお伝えします~
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「戦略思考」や「経営戦略」の講義のなかで、「経営的視点」を取り上げることがあります。「経営的視点」とは、「経営者の目線まで視座をあげること」などと言われますが、よく使われる表現の割には整理されておりません。私は登壇させていただくなかで、いくつかの要素に分けて話をしますが、その一つに「全体観」をキーワードに挙げています。
そして、受講生に問いかけます。
『経営的視点の要素のひとつとして、「全体観」があります。では、この「全体観」の全体とは何(どこまでの範囲)を指すのでしょうか?経営者の目線になって考えてみてください。』
入社3年目の受講生に聞いていくと、「部署全体?」や、「事業部門?」、「会社全体」(company)などの答えが返ってきます。そこで続けて、「もう少し視野を広げて考えてみましょう。他にないでしょうか?」と深く問いかけていくことで、「顧客」(customer)や「競合」(competitor)、「規制」や「経済」、「人口動態」、「技術」などがようやく出てきます。
大きな組織で仕事をしていると自分の所属部門(機能)の視点に偏ってしまいがちです。これをまずは事業単位でひとまとまりの活動として捉える視点に変えることが必要です。そのためには、企業活動全体を捉えるための「フレームワーク」を知っておくことが効果的です。先ほどの例では、「3C」「PEST」が挙げられます。
「財務諸表」は定量的に活動全体を捉えるための基本ツールです。
もうおわかりかと存じますが、ここでの「全体観」とは、企業活動に影響する経営環境「全体」まで視野を広げるのが望ましいです。時間軸も、足元という目先だけでなく、遠い将来まで視野を広げることを忘れてはなりません。
ここで「経営的視点」で人事部について少し考えてみましょう。22年5月に経済産業省より「人材版伊藤レポート2.0」が公表されました。それは「人的資本経営」の実現に向けた報告書で、その中では「経営戦略と人材戦略との連動」させる取り組みの重要性が強調されています。
人事部の役割が「守りの労務管理」から、「攻めの人材戦略」へと変わるなかで、人事についての知識も大事ですが、多様な経験がむしろ活きるのではないかと考えます。効率良くオペレーションする能力だけでなく、ビジネス感覚やマーケティングなどの資質もこれからの人事担当者には求められると考えますが、いかがでしょうか?
また、リクルートワークス研究所によると、2040年に約1,100万人の労働力が不足すると予測されており、多くの業種が景況と連動しない“構造的”人手不足になっていくことが想定されます。今後、「常に人材不足」という条件の中で、「経営戦略と連動した人材戦略」を“構築”し“実行”できるかどうかが、今後の業績に大きく影響を与えると考えますが、いかがでしょうか?
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★コラムと関連する研修・サービス紹介
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□戦略思考の基礎
https://www.kobelco-hrd.com/coursedetailbiz2024.php?24031
□育成体系構築支援
https://www.kobelco-hrd.com/ikuseitaikeikouchikushien.php