講師コラム
ハラスメント防止の手だてとしてのコーチング(講師 岩谷真弓)2022/03/02
~KBP講師が人事担当者様・ビジネスパーソンの方々へ役立つヒントをお伝えします~
───────────────────────────────────────
最近、ハラスメント防止のための組織風土改革を支援する機会が増えました。
コーチングを実践されている管理職は、ハラスメント事象を起こすことが無いと言われています。なぜなら、コーチングは双方向のコミュニケーションが大前提だからです。
人事院が出している「パワハラ度チェック」の質問項目には以下の問いかけが根底にあります。
「部下とのコミュニケーションが一方的になっていませんか?」
たとえば部下を叱るとき、言い訳も聴かずに叱るのは、誤った叱り方です。部下に指示を出す際、質問や意見を訊かず一方的に指示するのも、決して良い指示とは言えません。
いずれもコミュニケーションが一方的だからです。
一方的なコミュニケーションが常態化している上司・部下の間では、ハラスメントが起こりやすいと言われています。
「上司の役割」を考えた場合、一般的には次のような誤解があります。
「上司は部下に対し、詳細な指示を出すべきだ」
「部下から何か質問された場合、上司はきちんと答えるべきだ」
「部下に問題が発生した場合、上司が的確に解決策を出すべきだ」
このような上司・部下の関係性は「上下の関係性」です。「上司の役割認識の誤解」というのは、「上司と部下との関係は『常に』上下関係であるべき」という誤解です。
この関係性が長く続くと、部下は何も考えない「指示待ち族」になります。部下を育てるときも、お子さんを育てるときも、上下関係だけでは人はうまく育たないのです。
他に、どのような関係性があるのかというと、そのひとつが「横の関係性」―すなわち、コーチング的な関係性です。
横の関係性とは、たとえば、部下に仕事上の問題が発生しても、上司は簡単に解決策を提示しない、というかかわり方です。決して、いじわるでそうするわけでも、放任主義でそうする訳でもありません。上司は「部下が自分で考え、自分で行動するように促す、というかかわり方」に徹します。これが横の関係性です。
答えを出すわけでもなく、放任するわけでもなく、部下にかかわっていく方法が「コーチング」です。より具体的には、「上司が部下の話を聴き、部下に質問をすることにより、部下に考えさせ、気づきを促し、部下自身が持っている答えを引き出すこと」です。
コーチングでは主に、次の2つの実践が求められます。ひとつは「聴く」こと。もう一つは「問いを立てる」ことです。
いずれも、一朝一夕で身につけられるものではありません。一生をかけて培い、磨いていく、人としてとても大切な態度であり、能力です。
コミュニケーションでは、しばしば話す能力が重要であるかのように思われがちですが、人間関係において最も大切な「かかわり」は、「聴く」態度であって「話す」ことではありません。一流といわれるビジネスパーソンは、みな「聴く」ことを実践なさっています。
これまでコーチングの知識は持っていても、実際に使ってみることが少なかった管理者のみなさま、この機会にコーチングを実践されてみてはいかがでしょう。
--------------------------------
★コラムと関連する研修紹介
管理者のためのコーチング入門
研修日程等詳細はコチラ↓↓↓
https://www.kobelco-hrd.com/coursedetailbiz2022.php?22026