技術立国を旗印にしなければならない日本にとって、最近、懸念される事態がいくつか出てきた。
1998年「技術移転機関」(TLO: Technology Licensing Organization)がスタートし、2010年には約70のTLOが、大学などの技術に関する研究成果を民間事業へ移転している。
ところが、近年、大学発特許使用によるライセンス収入が低迷し、TLO自体が事業を清算するとか再編成するところも出はじめている。大学保有の特許の利用率も20%程度という。
日本企業および大学にとっても、産学連携研究そのもののさらなる活性化、法制面での整備も再検討する必要があるのかもしれない。
いっぽう、産学連携の歴史のあるアメリカ合衆国で、「顔の表情研究」「異文化間コミュニケーション」など、社会心理学の専門分野の新しい研究を商品化させたDr. David Matsumoto。商品の分野もユニークだが、たえず世界に目を向けて歩いていかなければならない日本にとって、示唆される点が多い。サンフランシスコ州立大学心理学部教授、同大学異文化感情研究所長の職位に就きながら、Humintell 社の創業社長として奮闘中である。
今回、Dr. David Matsumoto には、アメリカの大学が目指しているもうひとつの資源、大学と教員との契約関係、自社の製品およびコンセプトなどを中心にご紹介いただいた。