● 大学教員と大学との雇用契約関係

── tenure とnon-tenure ──

── いま、雇用契約の話が出ましたが、日本では、1997年から教員任期法が導入されました。大学教員に一定の任期を設け、業績や評価に基づいて再任するかどうか決める制度になりました。アメリカの場合をご紹介いただけますか?
■ マツモト先生 アメリカの大学教員の一般的な雇用契約は、つぎのようになっています。
 教員は、tenure-track (終身在職権路線)か non-tenure track (非終身在職権路線)のいずれかに所属しています。
 Non-tenure track というのは、日本でいう非常勤教員です。非常勤は、一学期とか二学期、あるいは一年間という期間で契約された教員です。Renewal がある場合は別として、契約後いつ解雇になるかわからない人たちです。

── Non-tenure の先生には、プロフェッサーもいるし、アソシエイト・プロフェッサーもいるわけですか?
■ マツモト先生 いやいや、non-tenure の先生の肩書(タイトル)は各大学によってまちまちで違います。
 サンフランシスコ州立大学では、non-tenure track の先生はプロフェッサー(professor)というタイトルでは呼びません。全部レクチャラー(lecturer)です。
 だけど、学校によっては non-tenure track のプロフェッサーがいたりする。大学によって違うんですね。

── そうした人たちも、tenure をもらったら、終身在職できるわけですね。
■ マツモト先生 そうです。


● Tenureを取るには厳しい審査がある


── Tenure を取得するには、どんな条件があるのでしょうか?
■ マツモト先生 Tenure-track に入る先生は、教職に就いてから、大学からのいろいろな review (審査)があります。通常7年の間に、学校から tenure をもらわなければなりません。

── 審査は毎年あるんですか?

■ マツモト先生 ほぼ毎年ありますが、大きいのは2年目、4年目、6年目です。大学から審査の成績が出るわけです。
 だいたい6年目に tenure になるかならないか、という大きな review があります。そのときに「ご苦労様でした」といわれたら、契約の残っている最後の1年の間にどこかほかのところを探しなさい、ということになります。
 でも、「よし」ということになれば、その大学から tenure をもらい、ずっと仕事を続けることができます。アメリカの大学ははっきりしていて、とても厳しい。



● Tenure の空席は全国募集

── ひとつの席に150人の応募があった ──

── Tenure をもつ先生の席が空くと、どうなりますか?
■ マツモト先生 募集しなくてはなりません。普通は全国的な national search になります。
 たとえば、うちの大学では去年、社会心理学で search があったけど、ひとつの席に150人とか応募者がくるわけですよ。

── すごい倍率ですね。
■ マツモト先生 厳しいんですよ。
 Non-tenure track の場合は、ローカルに住んでいる人たちがだいたい雇われる。でも tenure-track の空席には national search を行うので、すごく難しい。ひとつの席に大勢が応募するわけですから。
 だからといって、この track に入っても tenure をもらうかもらわないかは、別の話です。入ってもらわない人も、もちろんいます。