● UC と CSU と JC

── カリフォルニアの大学の場合 ──

■ マツモト先生 Research grant が重視されるようになった背景を説明するまえに、日本の方々はご存知かもしれませんが、アメリカ合衆国の大学の基本的な性格を紹介しておきましょう。これは、合衆国の各州どこでもほぼ同じ感じです。
 1990年代の後半に、日本では大学教員法が改定されましたが、カリフォルニア州の大学も1980年代あたりからすこしずつ転換しています。
 カリフォルニアには、大きくいって、州立の大学システムが3つあります。
(1)カリフォルニア大学(UC=The University of California):バークレー校、ロサンゼルス校、サンディーゴ校など10校ほどあります。このなかで、サンフランシスコ校だけは法学・医学の大学院しかありません。
 しかし、いずれも研究をメインにしている大学院重視の総合州立大学で、State という表示は使っていません。
(2)カリフォルニア州立大学(CSU=California State University):私どものSan Francisco State University もこれに入り、20数校あります。カリフォルニア州立大学(CSU)は、各学部の教育や教員養成、職業訓練などを教育目標にしています。
(3) 短期大学(Junior College または Community College)で2年制。
 以上のほかに、カルフォルニア州の教育マスタープランに入っていない私立大学があります。なかでもスタンフォード大学、南カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学などは、全米に知られています。


● Research grant 重視の大学が増える


── 日本からは、州立は全部同じに見えますが、それぞれ教育目標などに違いがあるんですね。少しずつ変化しはじめた背景には、どんな理由があるのでしょうか?
■ マツモト先生 カリフォルニア州立大学(CSU)のなかでも、研究をメインにすることを奨励しはじめたのは、research grant を豊かにしたいからです。
 そうした時期に、私は、研究のレベルアップのためにサンフランシスコ州立大学に雇用されたわけです。
 しかし初期の時代でしたので、大学とは研究についての契約がなかった。自分のやっている研究は、大学との契約外の Intellectual Property (知的財産)であると承知しているので、私は大学と別に組織をつくれるのです。スタートがほかの人たちとやや違います。
 しかし現在は違います。今、うちの大学に assistant professor で入るには、研究についての契約条項が入っています。
 「この大学において研究によってつくったものは、全部、大学のものである」という基本規定があります。その後にそれぞれ個別のいろいろな条件、会社の設立の有無などがつきます。
 もちろん、このような基本契約システムがあっても、バイオテクノロジーなどの分野の教員は、会社を別につくる人が多い。

── 会社をつくった場合は、それぞれ制限があるわけでしょう?
■ マツモト先生 あります。ノウハウとか knowledge や skill、すべての人事、場所なども、大学と関係のないようにしておかなくてはいけません。
 とはいえ、互いに無関係というわけにはいきません。後で細かく触れますが、現実には、成果は、大学と教員との間で配分していくわけです。そして、これが大学側の大きな revenue になっているのです。