● アメリカの社会におけるコネクション
── 日本人のなかには、アメリカの社会では人間関係のコネクションがきわめて重要だ、と思っている人がかなりいます。
一般のビジネス社会に限ってのことだけかもしれませんが、アメリカの大学のなかでも、コネに対する強い絆みたいなものがあるのでしょうか?
教え子とか、知人といったコネによって、採用・不採用が大きく変わってしまうとか?
■ マツモト先生 アメリカの大学では、コネの影響はゼロ。一般のビジネス社会に限ってのことだけかもしれませんが、アメリカの大学のなかでも、コネに対する強い絆みたいなものがあるのでしょうか?
教え子とか、知人といったコネによって、採用・不採用が大きく変わってしまうとか?
── ゼロですか…。一般社会では?
■ マツモト先生 一般社会のビジネスでは、社長あるいは欠員を求めている部署の上司が決めればいいから、その人が欲しければ、入れます。でも大学はそうはいかない。州立大学は州の管轄です。政府関係の仕事もそうです。大学関係では私立でもコネの影響はゼロ。
● 研究が主力の大学・大学院での research grant
── 1:9の難関を目指してアプライする ──
■ マツモト先生 前述のように、大学側から見れば、学生を教育指導する教員も大切ですが、主として、研究をメインにしている大学・大学院では、research grant に寄与する教員も欲しいわけです。
つまり、grant をもらえる人をたくさん雇いたい。大学としては、ポストは限られているけど、その限られたポストに grant をもらえる人を入れたいわけです。
── とすると、教員の tenure-track 審査のときには、grant をもらえる人であるかどうかが大きなファクターになりますね。
■ マツモト先生 そのとおりです。アメリカには、大学の研究や調査を求めている組織がいろいろあります。たとえば、大口では政府関係部署。そのほか、National Science Foundation とか、いろいろなパブリックの Foundation があります。
われわれはそこに apply (応募)するわけです。これこれを研究したいというアイデアがあって、それを研究するためには budget (予算)、資金が必要だと…。
このアイデアと budget をもって apply するわけです。だいたい90%は断られますよ。
● 大学と教員との間の配分のルール
── でも受かったら、そのお金は大学に入ってくる。
■ マツモト先生 そのとおりです。Budget (予算総額)をつくるときには、ルールがあるわけです。この研究の予算額に、この大学でやる分をプラスαするわけです。だからリクエストするトータルの予算額は、(研究予算x+プラスα)なんですよ。採用されたら、この(x+α)が入ってくる。
── x は研究者に。α は大学にいくわけですね。
■ マツモト先生 そうです。だから大学としたら、このαを増やしたいわけです。では、このαのレートはどれくらいかというと、各大学で違うんだけども、うちの場合は53%なっています。
── x の53%が大学分になるというと…。
■ マツモト先生 私が研究するために100万ドル必要だとすると、budget の総額としては、「100万ドル+その53%の53万ドル」で、153万ドルになります。だから採用されたら、研究者側に100万ドル入ってくる。53万ドルは大学に入ります。
こういう research をやっているわけだから、research grant を取るためのプレッシャーはすごいんですよ。
Research grant を取ればスターなんだけど、取れなきゃタダの人です。Research grant をもらうためには、研究のための印刷物やアイデアもすべて必要なんです。