● 札幌の定山渓温泉へ
■ 金井社長 送別会もしてもらっていましたので、神戸にいるのはかっこ悪いと思い、札幌市の定山渓温泉に行くことにしました。当時、政令指定都市で温泉があるのは、神戸市のほかには、札幌市しかなかったのです。ちょうど、有馬温泉と定山渓温泉が姉妹提携を結んだばかりでした。
■ 金井教授 そこで、金井さんが考えを変えるきっかけとなる、いろいろ出会いがあったのですね。
■ 金井社長 定山渓に行ったのが1977年8月です。行ってすぐ、NHKの朝ドラ『風見鶏』がはじまりました。一躍、神戸の風見鶏の館が全国の憧れの観光地になったわけです。そういう時期に、せめて1年間は定山渓にいないといけないと、悶々として過ごしていました。
年が明けて春になりました。4月の札幌は、雪解けで、雪にうもれていた馬雪車の馬糞が春風で飛び散って汚かった。地元の人は、馬糞風のころといっていましたが、旅館が1年で一番暇なときでもありました。
その暇な時期に、鮭の彫り物を咥えた熊の彫り物をお土産に持って、旅館の運転手をつとめながら、東北地方の旅行エージェントを周りました。
■ 金井教授 集客のための営業活動だったわけですね。
■ 金井社長 そうですが、世の中を見ておこうという気持ちもありました。