●「御所別墅」─ ファンドによる全室離れの客室

■ 金井教授 一番最近が「御所別墅(べっしょ)」になりますか?
■ 金井社長 震災から「御所別墅」をつくるまでの間というのは、私にとって向かい風や逆潮の時代でした。
 実は、それに逆らって事業を進めていたのです。震災前には、有馬温泉のマスタープランがほとんどできていました。温泉の中心街に車を入れず、有馬遊歩道をつくって歩ける街にするというものでした。
 震災で神戸の都市計画が全部ストップしてしまって、その後、有馬全体の町のプランのなかで、大きい駐車場をつくって、広い道路を通そうという流れがでてきました。なかには、「御所坊」を移転したら、という話まで出てきました。
 そのようなときに、たまたま土地の借り手を探していた人がいました。結局、「御所坊」は移転せず、ファンドをつくって土地を借りて、「御所別墅」を2008年にオープンしました。
 「御所別墅」は、1400坪の敷地に、すべて離れで1室100平米ある客室10室と、ロビー・レストラン棟、貸切りレストラン棟、そして温泉棟があります。 
 それまでは、もともと所有していたところを自分の資金で改装してきましたが、「御所別墅」は第三者が関わったわけです。ファンドですから、一定期間が経ったら、さらにまた借りるか、それとも「御所別墅」を売却して返済するか、という問題が出てきます。また、悩みを抱えることになりました。

 

 

● 旅館づくりのアイデアはどこから?

■ 金井教授 金井さんの旅館づくりのアイデアは、どのようなところか出てくるのですか。
■ 金井社長 私の旅館づくりには、旅が関係しています。
 綿貫先生と一緒に行ったニューヨークで出会った昔の古いフォーシーズンホテルなど、古い物を生かす考えから、「御所坊」を改装しました。
 「花小宿」はポルトガルの「ポウザーダ」。その当時日本人はポルトガル旅行なんてほとんど行ってないですから、「ポウザーダ」を参考にした「花小宿」は、たぶん日本の旅館業界では画期的だったと思います。
 また、ハワイによく行っていた時代があって、そこからコンドミニアムという発想が生まれました。興味があったバリ島の雰囲気がオーベルジュ「花郷里」に生きています。「御所別墅」はサーマルルームを設けていますが、これはヨーロッパの温泉巡りで出合った「テルマニュウム」という入浴法が参考になりました。人は体温と同じ環境にいることで免疫力が高まるそうです。そこで、36℃に保ったサーマルルームを各室に設けました。