● からくり作家・西田明夫さんとの出会い
■ 金井社長 まず、「グリコ」のおまけ作家の加藤裕三さんの前に、西田明夫さんと知り合いました。この人は明石生まれのからくりの作家です。もともとはデザイナーだったのですが、知り合ったときは、白馬にあるペンションのオーナーでした。雑誌『an・an』や『non-no』のペンション特集のトップに紹介されるペンションを経営していたのが、西田さんです。私は、スキーをやりますので、ペンションなるものに泊まりに行こうと思い立ち、最初に泊まったペンションが、西田さんのところでした。
聞くと、西田さんは明石の出身でした。私の母の里も明石で、家が近かったというご縁で、何回か通うことになりました。
西田さんは、泣き止まない、生まれたばかりの三男のためにオルゴールをつくって聞かせると、すごく喜んだことから、オルゴールからくりをはじめます。その白馬のペンションに展示していた西田さんの作品を見た泊り客に勧められて、東京で作品展を開きます。
持って行った作品が全部売れ切れることが度重なって、からくり作家としてやっていく自信が生まれ、長野で冬季オリンピックが開かれるころに、岡山の東栗倉村に移り、クラフトビレッジを開くわけです。
●「グリコ」のおもちゃのデザイナー加藤裕三さん
■ 金井社長 「グリコ」のおまけ作家の加藤さんは、西田さんが白馬にいたころ、地元の彫刻家の弟子でしたので、名前だけは知っていたそうです。加藤さんは震災前の数年間「グリコ」のおまけのおもちゃのデザイナーで活躍していました。地震のあと、西田さんが東栗倉村に引っ張って、一緒に作品展をしようと働きかけたのです。有馬の金井のギャラリーで二人の展覧会をしようということから、私の付き合いが広がっていきました。
加藤さんは、コーディネートが得意な人で、音楽関係でも指揮者の西本智実さんやピアニストと知り合って、その縁でチャイコフスキー財団にまでつながっていきました。
いっぽう、西田さんも外国ですごく認められて、サンダーバードの人形を制作したジェリー・アンダーソンとか、『ガリバー旅行記』を書いたジョナサン・スウィフトの子孫のデビッド・スウィフトさんとかとつながりがあります。
デビッド・スウィフトさんは、一昨年末に有馬でアーティスト・イン・レジデンスみたいなことをして、幾つかの作品を展示してくれました。
こういう作家のつながりはずっと広がりつつありましたが、残念なことに、まず加藤さんが亡くなり、西田さんも亡くなってしまいました。