● リーダーの育成
GEにはリーダーシップを強化するための、いくつかのツールがありますが、そのうちの一つを紹介しましょう。新しくリーダーになった人のためのプロセスのAssimilation(職場になじませること)です。
私のボスが、電話でアジアのビジネスのレビューをしていた時、私はどうもある国のマネジメントがうまくいっていないと気づきました。スタッフがいるはずなのに、すべての質問にその国のCEOが答え、全くチームとしてやっている感じがしない。私はミーティングが終わったすぐ後に、そのCEOとその部下をコーチングするため、その国に行くことをボスに提案し、3日後には現地に飛んでいました。
そこで行ったのがAssimilationです。その国のCEOの部下を十数人に集まってもらい、CEO(リーダー)について知っていること、知らないこと、続けてほしいこと、やめてほしいこと、自分たちのことについて知りたいことなど率直に語ってもらったのです。私がファシリテーションをし、2時間位かけてマネジメントに関する疑問点やリーダーに対する質問を出してもらいました。その結果、100個を超える課題が浮かび上がりました。
リーダーに一人で考える時間を30分ほど与えた後、全員部屋に入ってもらい、部下から出た質問や疑問点、意見などについて、そのリーダーに答えてもらいました。このアシミレーションではリーダーはきちっと答えていたのですが、問題はリーダーと部下たちとの間にオープンな会話が成り立っておらず、メッセージが一方的にしか流れていないことでした。その点をはっきりと指摘し、1か月以内に改善するようコーチングしたのです。この結果、組織は大いに活性化し、収益も大きく改善しました。かけた時間は5-6時間、そのことによる改善は著しく、改めてGEのツールの有効性を実感しました。
ほかにもリーダーと社員との間のコミュニケーションを良くする仕掛けは数多くあります。たとえば、GEのリーダーはしょっちゅうラウンドテーブルミーティング(RTM)を行います。GEに関するあらゆるテーマで、リーダーが社員の質問に答えていくわけです。また、GEのトップリーダーが来ると必ず100人、200人、多いときは500人集めてメッセージを送り、社員の質問に答えていきます。
GEではリーダーの人材育成に対する「Ownership(自分の問題として引き受けること)」がとても強いのが特徴です。ジェフリー・イメルトは自分の時間の3~4割の時間を人材育成に使っていると言っています。いい人材が結果を出すようにすることが事業の成功のカギですし、そのためにはビジネスレビューをはじめオペレーションを通して人を成長させ、結果を出すことが人材育成そのものなんです。
