■金井教授: 今日の話をお聞きしていると、システムを通じて分析的な戦略を重視するという以上に、八木さんのお話の中には、深い思いがあり、それを実現するために、人事が一生懸命に経営のパートナーになっている。
 ビジネスのパートナー、経営のパートナーとしての人事という問題について、八木さんご自身が考えをお持ちだと思いますが、ご経験に基づいて、踏み込んで考えていただくと、どう考えるのが一番素直ですか?

■八木氏: 戦略やゴールを「今」という時点で切ったときに、そこに一貫性があるかどうかを非常に大事にします。日本の会社を見ていると、過去との間に整合性があるかという、継続性のマネジメントをやっているような気がするんです。世の中どんどん変わっていくのだから、戦略もどんどん変わっていかなくてはならない。会社の戦略が変わったのに人事が前と同じことをやるというのは戦略的じゃない。
 常に「今」という時点で切って、我々がやっていることが、「今」この会社が達成しようとしていることに対して整合性があるかを見ています。変化する時代には戦略も変えていかなければならない。したがって人事戦略の要諦は、むしろ変えることにある。即ち現状を固定化してしまう制度や仕組みはできるだけつくらない。つくったとしても、運用に幅を持たせる。

■金井教授: 放っておくと会社の仕組みは複雑になっていくものですが、GEの人々の基本は難しいことは言わず、「やると言ったことはとことんやる」ということに近いですね。

■八木氏: GEは、エンパワーメントの会社です。方向が決まったらもうみんなでやろうという、それがパワーなんです。
 ややこしいこと、人に伝わらないことを言うより、みんなが理解できて、「ヨーイ、ドンッ」の合図で走れるぐらいのわかりやすい方向性、戦略をもっていったほうが絶対勝ちます。その“わかりやすさ”をとても大切にしている会社だと思います。

■金井教授: 八木さんに大きな拍手でこの会を終わりたいと思います。ありがとうございました。本からだけではわからない機微をたくさん教わることができました。一層ご活躍ください。
(担当:濱尾 功二郎)